狂牛病牛肉と放射能汚染野菜~アメリカ合衆国産牛肉と福島県産野菜 について。

〔第34回〕 狂牛病なる病気が発生して、世界に広がり、アメリカ合衆国産の牛肉を輸入禁止にしていた時期がありました。 その後、若年齢の牛の牛肉に限り輸入可としたと思います。 このアメリカ合衆国産牛肉の輸入禁止と、福島県産野菜の購入、摂取をためらう人、というのが立場として似ている、構図として共通していると思うので述べさせていただきます。
 
   山内 一也『狂牛病と人間』(2002. 岩波ブックレット)によりますと、狂牛病というのは、イギリスの農民がつけた名称  mad cow disease の和訳で、正式名称は牛海綿状脳症 Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE)というそうです。
   結論として、狂牛病にかかった牛の肉を食べるのは人間の健康に好ましくないわけです。どういうように好ましくないか・・・といったことは、『狂牛病と人間』(岩波ブックレット)なり、他にも書物は出ていますから、関心のある方は、そちらを見ていただきたいと思います。 それで、牛が狂牛病にかかっているかいないかを調べる方法というのはあるらしいのです。 費用はかからないわけではないけれども、無茶苦茶高いわけではなく、安全のために、全頭、検査することはできるらしく、そして、日本産の牛については、全頭検査をおこなっているそうです。 それに対して、アメリカ合衆国では、全頭検査はおこなわず、抜き打ち検査しかおこなっていなかったらしいのです。
   全頭検査と抜き打ち検査では、どういう違いがでてくるのか。 
   たとえば、魚の河豚(ふぐ)は、猛毒を持っているけれども、フグは大変おいしいらしい。(「らしい」というのは、ふぐ などという高級料理など、私は食べたことがないので、良く知りません。おそらく、死ぬまで食べることはないでしょう。) 小学館から月2回発行されている「ビッグコミック」という漫画雑誌に『築地魚河岸三代目』という漫画が連載されていて、その中に、築地の フグ専門の仲卸しの話がありました。 実際に、漁をする漁民から大卸し、そして、仲卸しと経ることにより、その過程で、食用に適さない危険なフグは排除され、決して食用に適さないフグが消費者の手に行かないようにしているという話です。 やはり、小学館から月2回発行されている「ビッグコミックスペリオール」という漫画雑誌に『味いちもんめ』という漫画が掲載されており(今は、『味いちもんめ・独立編』)、フグ調理師の資格を取得しようとする伊橋くんの話が出ていました。 フグは猛毒を持っていて、危険ですが、しろうとが釣って、食用に適するフグか適さないフグかもわからずに、そして、フグの調理のしかたもよくわからないしろうとが調理したのでは危険ですが、そうではなく、フグ専門の仲卸しが責任を持って食用に適さないフグは除外し、そして、厳しいフグ調理師の資格を取得したフグ料理のできる料理人の手で調理されたものであれば、食べようとする人の前にでてくるフグ料理については、危険なものではないというのです。
   狂牛病にかかってしまった牛はどうかといいますと、今現在、そして、これからは、狂牛病という病気は世界から簡単になくならないと思われるけれども、もしも、全頭検査をして、それで、狂牛病の牛を発見したとすれば、それは、フグ料理において、フグ専門の仲卸しなど流通過程において食用に適さないフグがよりわけられ、又、フグ調理師の資格を持ったフグ料理のできる調理師が食用に適するフグでも、食べるべきではない部位を、とりのけたのと同じことで、全頭検査をおこなって、狂牛病にかかっているという検査結果がでた牛がいたとしても、それ以外の牛は狂牛病の検査によって狂牛病にかかっていないと診断されておれば、大丈夫だというのです。
   それに対して、抜き打ち検査であれば、その国のその地方において、狂牛病が発生しているかどうかを調べるのには、ある程度、役に立つとしても、もしも、抜き打ち検査において、狂牛病にかかった牛が発見されたとしたら、それまでに、狂牛病にかかった牛がすでに市場にでて販売され、食用にされているかもしれないし、狂牛病にかかった牛が発見されなかったとしても、抜き打ち検査で検査する対象にならなかった牛に狂牛病にかかった牛がいた可能性も考えられるわけです。
   それで、日本では、日本の肉牛については、全頭検査をおこなうようにしたらしいのですが、アメリカ合衆国では、全頭検査は必要ない、抜き打ち検査で大丈夫だという姿勢をとってきそうなのです。 それで、日本は、日本に輸出する牛については全頭検査をおこなってもらいたいと求めたのですが、アメリカ合衆国としては、アメリカ合衆国の国内では、抜き打ち検査しかおこなっておらず、それで大丈夫で、日本に輸出するものについてだけ、全頭検査をおこなうことはしないという返事であったらしく、それでは、輸入できませんということで、アメリカ合衆国産の牛肉を輸入禁止としたらしいのです。 今、アメリカ合衆国産の牛肉で輸入されているのは、比較的、狂牛病にかかりにくいとされる若年齢の牛に限っているはずですが、それで大丈夫かどうかはわかりません。 全頭検査が必要と考えるか、抜き打ち検査で十分と考えるかは、それぞれの人が自ら考え、判断するべきことでしょう。 

   さて、アメリカ合衆国さんとしては、日本に牛肉を買ってもらいたかったらしいのですが、日本としては、全頭検査をおこなってもらえるのであれば、買いたいが、全頭検査をおこなってもらえないのであれば、買うわけにはいかないと判断したわけです。 
   そこで、アメリカ合衆国さんは、アメリカ合衆国では狂牛病の検査は抜き打ち検査で十分だと言っているのに、アメリカ合衆国産の牛肉を買わないというのは、「アメリカ合衆国人差別だ。」「風評被害にあっている。」などと言いましたでしょうか? 言ってないと思いますよ。 あるいは、アメリカ合衆国産の牛肉をパクッと食べてみせるパフォーマンスをする政治家が続出したかというと、そんなことする人は出ませんでしたよね。

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   ↑ (右)山内 一也『狂牛病と人間』(2002. 岩波ブックレット)
     (左・背後)ドイツ気象局による「あすの放射性物質拡散濃度予測」 を伝える「夕刊フジ」2011.5.17.号 2011.5.16.発行) 5月17日(火)は、宮城県・岩手県・宮城県沖・三陸沖から北海道東部、千島列島、及び、オホーツク海などに拡散する予測のようです。

   福島第一原子力発電所の事故以来、放射性物質が大量に放散され、そして、福島県東部中部を中心に放射性物質による汚染が進み、そして、農産物・畜産物・水産物に放射能汚染が見られてきました。
   政府は、今までから「基準値」だか「規制値」だかを設定されていたものについては、その数値をあげて、今まで認められていなかった数値のものまで「大丈夫」「ただちに健康に影響がでるレベルではない」と言って良いことにし、今まで「基準値」だか「規制値」だかがなかったものについては、急遽、「基準値」だか「規制値」だかを設定いたしました。 
   こういった、「基準値」だか「規制値」だかの設定は、その数値を上回るものは流通させないということを目的に設定されたものなのか、それとも、その数値を下回るものについては、「基準値」だか「規制値」だかを下回っているから、という理由、大義名分のもとに販売してしまおうという目的で設定されたものなのか、ということを考える必要がありますが、ともかく、そういう、基準になる数値が仮に設定されたわけです。

   そして、その「基準値」だか「規制値」だかを下回っているものだから大丈夫ですと、あたかも、かつて、「原子力発電所は安全です。」とか 「放射線は、もともと自然界にも存在しているんです。」「放射線は、奈良県の石舞台だってだしているんです。」「飛行機に乗って海外旅行をすれば、放射線をあびているんですよ。」とかなんとかかんとか言い、そして、アメリカ合衆国のスリーマイル島で原発事故が起こっても、「あれは、日本の原子力発電所とは原子力発電所としての機械の種類が違います」とかなんとか言い、ソ連のチェルノブイリで原発事故が起こっても、「ソ連の管理が悪いからです。」「社会主義の問題点であって、資本主義の日本では起こり得ないことです」とか「日本の原子力発電所は安全です」とかなんとかかんとか言ってきた人のように、「福島県産野菜は安全です」と言って、そして、福島県産のイチゴその他をパクッと食べるアホなパフォーマンスをする政治家まで出現しました。   
   天皇へーか までが、福島県を訪問して、福島県産の野菜セットを購入してお帰りになるというパフォーマンスをされたようです。買われるのはけっこうですが、もしも、天皇へーかに福島県産の野菜セットを買ってもらって、それを意図的に報道して、国民に福島県産野菜を購入させようとしたというものであれば、それは、「天皇の政治利用」という憲法違反の行為になるはずです。 天皇へーか は何も悪気で買われたわけではないとは思いますが、天皇へーか は、別に、原子力や放射能の専門家ではないので、安全ですとまわりの人から言われたので、福島県の人たちもがんばってくださいね、という意味で買われたのであって、実際に安全であるのかないのかについて、他の人より良く知っているわけではありませんね。


   さて、狂牛病と牛肉に関して、アメリカ合衆国さんは、抜き打ち検査で大丈夫だ、と判断し主張して、輸入してくれ、買ってくれ、と言われたのですが、日本としては、アメリカ合衆国さんの判断はそうかもしれないけれども、私たちは、そうではなく、全頭検査をしたものでなければ安全とは考えないのです。 だから、アメリカ合衆国さんとは、今後も仲良くやっていきたいとは思っていますが、牛肉については、全頭検査をしてもらえないのであれば、買いたくないのです、という対応をしたわけです。 アメリカ合衆国さんとしては不満であったのですが、だからと言って、「アメリカ合衆国人差別だ」とも「風評被害にあっている」、「なんとしても、風評被害を防がなくてはいけない」などと言われることはなかったのです。
   福島県産の農産物・畜産物・水産物はどうでしょうか。 「基準値」だか「規制値」だかをクリアしたものが市場に出たとして、それを買わないといけないという義務が消費者にあると主張するのはおかしくないですか? 
   放射性物質に関して、「『基準値』だか『規制値』だかを下回っているだけでなく、関西以西のものと同程度以下のものが欲しいんです。」と言って、福島県、及び、その周辺の方とは今後も仲良くやっていきたいとは思いますが、福島県、及び、その周辺の農産物は、「基準値」「規制値」以下のものであっても、関西以西のものや原発事故の影響のない外国産のよりも、放射性物質の量が多い可能性が高いと思われるので、できるだけ、買いたくないのです、食べたくないのです、と言えば、どうして、「福島県人差別にあった」だの「風評被害にあっている」だのということになるのですか?

   
   私の仕事は建築屋です。 建築工事現場に、何か部材を運んでくださいと、業者に依頼をしたとします。 住宅機器類、たとえば、洗面台を工事現場に届けてくださいと依頼したとします。 あるいは、構造材として、桧の4寸角の役柱【 「役柱(やくばしら)」とは、真壁(しんかべ)〔柱が見える作り〕の部分で柱が見える所で使用する柱を言い、大壁(おおかべ)〔柱が壁の中に入って見えない作り〕の部分で使用する、完成すると室内において見えなくなる柱を「並柱(なみばしら)」と言います。】 を工事現場に届けてくださいと依頼したとします。 製造業者は細心の配慮をして問題のないものを製造し、運送業者も最善の運転をして届けようとしたとします。 製造業者にも運送業者にもミスがあるわけではありません。 ところが、道路を運行中に、まったくけしからんことに、突然、横から突入してくるクルマがあって、運送業者のトラックが横転してしまったとします。 その時に、乗せていた洗面台に一部傷がついたとします。 あるいは、乗せていた桧の4寸角の役柱に傷がついてしまったとします。 少々、傷がついたとしても、洗面台として使えないことはないかもしれません。少々、傷がついたとしても、柱として使えないことはないかもしれません。 しかし、建築屋の立場として、それで良いと判断できる範囲のものでなかったならば、それは受け取れません、傷のついていない洗面台を届けてください、傷のついていない桧の役柱を届けてください、と言うことになりますね。 
  その際、製造業者、あるいは、運送業者が、自分は悪いことはしていないし、ミスもしていないのに、買ってもらえない、受け取ってもらえないのは不当だ、「○○県人差別だ」と言ったとしたらどうでしょうか? 「風評被害にあっている」と言えばどうでしょうか? (民主党の議員さんの中には、桧の柱、丸かじり、とかやりかねない感じの人もいるように思えるのですが、桧の柱は食べるものではないので、食べないでください。まさか、天皇へーか に桧の柱丸かじり なんて、させないでくださいね。)
  人によっては、それでも使えると考える傷でも、こちらとしては、受け取ることはできないという判断になるものであったとします。 受け取らない者が悪い、買わない者が悪い、という主張は、怒る相手を間違えているのと違いますか?  悪いのは、横から突っ込んできて、横転させて積み荷をひっくりかえらせたクルマの方ですよね。
  福島県産の野菜などを買ってもらえないというのは、放射性物質に関して、「基準値」だか「規制値」だかを下回るだけでなく、西日本産、及び、原発事故に無関係な外国産のものと同程度以下のものが欲しいから、買いたくない、食べたくない、と購入をためらう人間が害を与えているのではなく、 せっかく育てた野菜などの価値をだめにしてしまった、原発事故を起こした東京電力、原発推進を主張した「学者」、原発推進を主張した政治家が害を加えたのですよね。違いますか?  
  福島県人というのは、この程度のこともわからない人たちではないはずですが、「福島県人差別だ」だのなんだのかんだのと悪態ついて売りつけようというのは、人間として卑劣だと思いませんか?  なぜ、本当に害を与えた者に責任を問わずに、害を与えた者とは異なる人間の方に攻撃を加えるのですか?   
  私は、実際は、基本的には、「福島県人差別だ」だのなんだのかんだのと言って福島県産野菜を売りつけようとしているのは、実際の福島県人ではなく、むしろ、東京電力や原発推進を主張した「学者」、原発推進を主張した政治家、及び、その人たちの支持勢力など、できるだけ、東電の賠償額を少なくしてやろうとする人たち、東電の責任を軽くしようとしている人たちであろうと思っています。


  中部大学教授・武田邦彦さんのブログ 「練馬区、日本医師会、イオン、そして表土」 http://takedanet.com/2011/05/post_adae.html には、≪ これもある郡山市の読者からの情報提供です。 「当初15~17μSv/hrもあった畑でしたが、先日、枯れ草を退けると1~3μSv/hrまで下がりました。かなり骨の折れる作業でしたが、その甲斐があったようです。」 素晴らしい!! 県民賞!! これから30年の被曝を大幅に減らしています。 1マイクロぐらいまで減らせば、ヨウ素の半減期もあり、1年後には1年1ミリになる(普通と同じ土地)になる可能性が出てきました。≫ と書かれています。 そういう努力をされて、そして、放射性物質に関しても西日本産のものに劣らないものができたのであれば、それでも不安がまったくなくなったというわけではないとしても、購入を検討して悪くないと思いますが、「福島県人差別だ」だの「風評被害にあっている」だのなんだのかんだのと悪態ついて売りつけようとするようなものは、買いたくないし、それを買っても、被災者支援にならないと思いますね。   

  一般国民に脅迫的に買わそうとするのではなく、原発推進を主張した「学者」・原発推進を主張した政治家・原発推進に加担した有名人、及び、歴代の東電の社長・会長・副社長他全役員は、私財をすべて出して、福島県産農産物・畜産物・水産物をすべて買い取れ!
それが本来ではないか?!?

  なお、米については、3月11日の時点では、すでに、収穫の後であり、今、市場に出ているものについては、放射能汚染とは関係ないと思うので、私は買いますし、先日も「会津産特別栽培米」をスーパーで買いました。 もっとも、農家にとっては、すでに売った後のもので、福島県の農家の収入には関係ないかもしれませんが。


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