ツーバイフォー工法の構造現場と考察(1) ~千葉市・星久喜(ほしぐき)モデルハウス【1】

〔第7回〕 
  新華ハウジング有限会社の千葉市中央区星久喜町の、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)による住宅・星久喜モデルハウスの建築工事中建物です。 ↓

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  おおまかな言い方をしますと、「ツーバイフォー工法」というのは、ツーバイフォー材(2×4材)と構造用合板、もしくは、構造用パネルとを釘で打ちつけて、各部屋を箱のように作り、建物全体もまた箱のようにして作っていき、全体で強度を発揮するようにした工法です。
  杉山英男・社団法人日本ツーバイフォー建築協会技術部会共著『安心という居住学―今なぜツーバイフォー住宅か』(1996. 三水社)によると、ツーバイフォー工法の原型は、アメリカ合衆国のシカゴで生まれたらしいのですが、「ツーバイフォー工法」という名称は、日本で作られた呼び名で、本によっては、≪「枠組壁工法(わくぐみかべこうほう)」が正式名称≫などと書かれたものも見かけますが、「枠組壁工法」という名称も日本での名称で、建設省(現在の国土交通省)の住宅生産課長の金子勇次郎という方が、「枠組壁工法」という名称で呼ぶべきだと主張したところからきたもののようです。
  たとえば、在来木造のことを「木造の軸組構法」と言い、又、「鉄骨軸組構法」「木質パネル構法」など、建築の構造について、「こうほう」の字は「構法」という字を使用することが多いのですが、「ツーバイフォー工法」「枠組壁工法」だけは「工法」という字を一般に使用しており、「構法」と「工法」はどう違うのか、なぜ、「ツーバイフォー工法」だけ、「構法」ではなく「工法」なのか、と前々から疑問に思ってきたのでした。
  2005年に亡くなった木構造の研究者・杉山英男・元東大名誉教授は、『安心という居住学―今なぜツーバイフォー住宅か』(三水社)で、≪ 構法というのは、構造すなわち骨組を作る方法のことである。・・・「工法」は施工すなわち工事の方法のことである。・・・ただし現実には、構法と工法が表裏の関係にあり、区別しにくいのも事実で、・・・≫と述べられており、この本を読んで、なるほど、そういう違いか・・・と理解したのでしたが、なぜ、「ツーバイフォー工法」だけ「構法」ではなく「工法」の字を使うのだろうか、と疑問は残ります。杉山英男・元名誉教授は「ツーバイフォー構法」と表現されており、本来は「構法」を使うべきという考えのようです。

  それで、アメリカ合衆国では、どういう呼び名であったのかというと、「バルーン フレーミング」「ブレースド フレーミング」「プラットフォーム フレーミング」といった名称で呼ばれてきたらしく、それぞれ、少しずつ構造の内容も違います。 「バルーン」とは風船のことで、現在の「ツーバイフォー工法」では、1階の床ができて、1階の壁が枠材と面材とで作られ、2階の床ができて2階の壁が枠材と面材とで作られて・・・と作業が進み、1階の枠材と2階の枠材とは別になっていますが、「バルーンフレーミング」「バルーン構法」においては、縦の枠材(スタッド)は、1階から2階まで通しになっているところが大きな違いのようです。 住宅雑誌において、「ツーバイフォー工法のことを北米ではバルーン構法と呼ぶ」などと書かれたものを、いつしか見た記憶がありますが、「ツーバイフォー工法」=「バルーン構法」ではなく、ツーバイフォー工法の源流のある時期のものが「バルーン構法」と考えるべきでしょう。
  ツーバイフォー工法は、枠材と面材とを釘で打ちつけて一体化したもので、上からの加重を受け、地震・台風などでの横方向の力に対しては構造用合板・構造用パネルという面材が「細かい筋交いが無数にあるような」働きをするとされ、枠材の太さは、軸組構法(在来木造)の柱よりも細くても、「枠材+面材」とで、又、建物全体で強度を発揮するとされ、飛行機の機体・電車の躯体・卵の殻などにたとえられるようです。
  それで、私などは、在来木造(軸組構法)では、「通し柱」「管柱(くだばしら)」「梁(はり)」「桁(けた)」「間柱(まばしら)」「土台(どだい)」「筋交い(すじかい)」・・・・と各部材の名前を一生懸命覚えたものですが、ツーバイフォー工法の部材の場合は、「枠材(わくざい)」と「面材(めんざい)」、及び、面材として使用される「構造用合板」と「構造用パネル(配向性ストランドボード、オリエンティッドストランドボード、OSB)」と、ツーバイフォー材(2×4材)、ツーバイテン材(2×10材)くらいの名称を覚えておけばすむのかくらいに思っていたのですが、どうも、ツーバイフォー工法でも、それぞれの部材に名称があるらしく、『安心の居住学』によれば、たとえば、縦の枠材を「スタッド」というようです。

  上の写真で見られる面材は、「構造用パネル」です。面材には、「構造用合板」を使用する場合と「構造用パネル(配向性ストランドボード、OSB)を使用する場合があるようですが、上の写真に見られる千葉市中央区星久喜の新華ハウジング有限会社のモデルハウスにおいては、構造用パネル(配向性ストランドボード、OSB)を使用しています。
  構造用合板の場合、20年くらい前までは、ラワン合板が多かったように思いますが、20年前くらいから北米針葉樹合板が使用されるようになり、最近では、針葉樹合板の方が、むしろ、よく見かけるように思います。 「ラワン」とは、フィリピンなどでとれるフタバガキ科の木で、木の目がすなおで、かつては、国産材よりも安かったことから多く使用されたのですが、東南アジアから輸入されるラワンなどの木が、なぜ国産材よりも安いかというと、国産の桧・杉・栂などの木は、木を植えて育てて、そして、伐採して製材するという行程を経て使用されるのに対して、東南アジアから輸入された木は、多くが、自然に生えている木を伐採して持ってくるもので、木を植える過程・木を育てる過程でかかる費用がないことに原因があると言われ、その結果として、東南アジアの天然の森林を破壊するとともに、日本国内の林業と人工林をも破壊することとなったと批判されました。フィリピンで台風の時に被害が多くなったのには森林破壊が原因のひとつとも言われます。 そういった批判がされた頃に、一方で、アメリカ合衆国から木材を買ってちょうだい、と言われて、「日本はアメリカ(合衆国)のメカケみたいなものだから、ダンナの言うことをきくのは当たり前だ」ということなのかどうかわかりませんが、北アメリカから輸入される針葉樹の合板の使用が増えてきたようです。ラワン合板は表面が割れることはあまりないのに対して、針葉樹合板は表面に割れが出ることがしばしばあるようですが、強度ではどちらが強いのでしょう?
  ツーバイフォー工法や木質パネル構法(木質プレハブ)の面材として、合板は使用されても、ムクの板は使用されないのは、なぜなのか。ムクの板は合板より弱いのか、ムクの板は合板よりも値段が高いのか・・といったことを考えたことがあります。 強いか弱いかの問題ではないでしょう。 強いか弱いかの問題ではなく、合板は、「ベニア」「単板」と言われる薄い板を、木の目が交互になるように奇数枚貼って作るため、どちらの向きにも強度を発揮するようになるのに対して、ムクの板は、強度が弱いわけではないけれども、自然な木を切ったものなので、強い方向・弱い方向があり、そのために、ツーバイフォー工法や木質パネル構法(木質プレハブ)の面材としては、合板が使用されるということのようでした。
  それなら、「構造用パネル(配向性ストランドボード、OSB)」はどうでしょう。 上の写真で見ても、なんだか、木屑をいいかげんにくっつけたかのような感じに見えるのですが、実際は、そうではなく、何層かでできていて、それぞれの層ごとに向きがあり、合板と同じように、向きが交互になるように重ねられているというのです。「オリエンティッド ストランド ボード」の「オリエンティッド」という英語の意味は、「東方」という意味ではなく、「方向づけられた」という意味のようです。 針葉樹合板が、その名の通り針葉樹でできているのに対して、OSB(オリエンティッド ストランド ボード、構造用パネル)は、主に広葉樹でできているらしく、強度については、「せんだん力」については、構造用合板よりも、むしろ、OSB(オリエンティッドストランドボード、配向性ストランドボード、構造用パネル)の方が強いと言われるようです。
  ツーバイフォー工法が最初にできた頃から合板はあったのかな??・・合板というものが開発される前はツーバイフォー工法はどうしていたのかな??・・と思ったことがありました。『安心の居住学』によれば、やっぱり、最初は構造用合板や構造用パネルは使っていなかったようで、ムクの板を何枚か斜めに並べて貼っていたようです。 合板を使用するようになったのは第二次世界大戦の後で、戦争中に軍需用に使用された合板が、戦後、軍需が減ったことから、その使用法として、ツーバイフォー工法の面材に使われるようになったとされます。なるほど、そういうことか・・・。
  ツーバイフォー工法が日本に取り入れられだした頃、北米とは気候風土が違う、温暖多湿、特に「梅雨」といった季節があり「多湿」な日本に適合するのか、といった不安が言われましたが、その後、年月を経ても、ツーバイフォー工法の建物は日本に定着してきています。 
  但し、壁の断熱材の内と外で温度差ができるため、壁の断熱材の外側の部分で内部結露(壁体内結露)が発生することがあり、在来木造(軸組構法)では、横方向の力に対して「筋交い(すじかい)」という斜め材で、「線」で対抗するので、断熱材の外側に通気層を取りやすいのに対して、ツーバイフォー工法では、断熱材の外側に構造用合板か構造用パネルという「面」がきて、通気層は構造用合板・構造用パネルの外側になるので、在来木造に比べて、内部結露(壁体内結露)が解消されにくいという性質はあります。
  構造用合板・構造用パネル(配向性ストランドボード、オリエンティッドストランドボード、OSB)は、どちらも、ツーバイフォー工法の面材に使用されるもので、使用を認められているものですが、あえていえば、構造用パネルの方が「せんだん力」は強く、構造用合板の方が構造用パネル(OSB)よりも湿気に弱くない、といったことも言われるようで、絶対的にどちらが良いとは言えないようです。 
   但し、この場合の断熱材とは、グラスウール・ロックウールなどの鉱物繊維系の断熱材を主として想定したもので、化学物質系のウレタンなどを、成型したものでなく現場で吹き付ける方法をとれば、内部結露は発生しにくいとも言われるようです。

  青木博文 ・他『最新建築構造入門』(2004.実教出版)には、建築構造の分類として、材料による分類・つくり方による分類・形による分類が述べられており、「つくり方による分類」として、
1.架構式構造・・・棒状の長い部材の柱や梁を組み立てて、骨組をつくる構造。 木造軸組構法・鉄骨軸組構法など。
2.一体式構造・・・外部からはたらく力に対して構造全体が一体となって抵抗する。 鉄筋コンクリート構造・鉄骨鉄筋コンクリート構造。
3.組積式構造・・・ブロック状や棒状の材料を現場で組み上げて壁を作り、それらの壁を箱型に構成した構造。 補強コンクリートブロック構造、木材による丸太組構法など。
4.組み立てパネル式構造・・・工場で製作した壁や床のパネルを現場で組み立ててつくる構造である。 パネルの材料は木製・鉄筋コンクリート製・金属製などがある。
・・・・と、4つに分けられるように書かれているのですが、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)は、この分類では、どれになるのでしょうか。 枠材と面材とが「一体」になって上からの加重を受けますし、建物全体が箱状になって強度を発揮しますから「一体式構造」のようにも思えますが、「鉄筋コンクリート構造」「鉄骨鉄筋コンクリート構造」ほど一体ではないでしょう。 最近では、あらかじめ、工場でパネル化して組み立てる度合いが大きくなってきていますが、「組み立てパネル式構造」というのは、「プレハブ」に分類される「木質パネル構法」やプレキャストコンクリートのコンクリート系プレハブなどを言うのではないかとも思えます。 在来木造のような「架工式構造」ではないし、組積造のログハウスのような「組積式構造」でもないのは確かですが、「一体式」に入れるのか「組み立てパネル式」に入れるのか、迷うところです。 
  結論としては、先に分類法があって、そこから各構法ができてきたのではなく、先に各構法があって、それを分類する方法が考えられたのであり、別にどこに分類しようが、その構法が存在することに変わりはないのですが、この分類法を見ると、この本の作者は、ツーバイフォー工法をどこに分類するつもりだったのだろう・・??とか思ってしまいます。

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 ↑ (左)青木博文・他『最新建築構造入門』(2004. 実教出版)
    (右)杉山英男・社団法人日本ツーバイフォー建築協会技術部会『安心という居住学ー今なぜツーバイフォー住宅か』(1996. 三水社)

  1960年代は、2階建ての住宅でも、総2階ではなく、1階が広くて2階に2室くらいあるといった建物が多かったのが、いつ頃からか、ほとんど総2階の、いわば「サイコロ」のような形状の住宅が多くなってきました。 上の写真の建物も、「サイコロ」のような外見ですが、地震などに対する強度を考えると、むしろ、「サイコロ」の方が強く、特に、ツーバイフォー工法の場合には、「サイコロ」型の形状の建物は強度を期待できると言って良いのではないでしょうか。

☆構造建築工事現場については、
≪在来木造 構造工事現場の観察と分析(1) 市原市菊間 I 様邸の推移≫ http://shinkahousinght.at.webry.info/201102/article_3.html 
≪ツーバイフォー工法の構造現場と考察(2)~千葉市緑区・W様邸 ≫ http://shinkahousinght.at.webry.info/201102/article_7.html
も、どうぞ御覧くださいませ。




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