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zoom RSS 木を人工乾燥しても濡れたり湿度が上がれば一緒?なわけないでしょ―教える気がなくなる新人(1)-1

<<   作成日時 : 2014/12/28 13:30   >>

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[第304回] 会社と営業のお話(67)
教える気がなくなる新人営業)(1)
[1] 中央住宅(ポラスグループ)の脳たりん営業 は 何を言ったか。 「人工乾燥」の意義。
   今となっては、25年も前の話になってしまった。 大学新卒で小堀住研(→エスバイエル→ヤマダ・エスバイエル・ホーム)に入社した1年目、配属された千葉県松戸市の営業所(住宅展示場)で、営業課長であったUさんは、自分自身が追客中の見込客との折衝状況を、営業所の事務所内で、新人の私や営業課の他の営業担当者に自分はこのように折衝している、見込客はそれに対してどう反応した、競合会社の営業はこういうことを話した、といったことを話してくれた。 雑談風に話していたのだけれども、大学新卒新人であった私には、それは相当に参考になった。
   小堀住研の松戸展示場は、「桂離宮のようなすばらしいデザインを現代に」という趣旨の「新 桂」という商品名で、「洋のかたち」「和のかたち」と名付けられた和洋の展示場のうち、「和のかたち」の方、現代和風外観の展示場で、けっこう人気が良かった。 玄関を入った突き当りにあった「坪庭」、カシュ―塗りの床柱の床の間のある和室と1間幅の広縁。 ココナッツマットを敷き詰めたリビングルーム、吹き抜けのあるダイニングルーム、モーリショップ(http://www.mohly.co.jp/history.html )のシステムキッチン。 勾配天井の寝室は夜空をイメージしたらしく天井は黒色になっていた。リビングルームの前の庭には、長い軒の中ほどをくりぬき、そこから植木の幹が屋根の上に出るようになっていた。 玄関戸は、回転扉で、回転軸はその中央にあるのではなく一方に寄り、広く開く側と小さく開く側ができるようになっていた。 当時、そのような玄関扉が市販の商品であるのかと思ったのだが、玄関戸のメーカーのカタログを見ても見つけることはできなかった。 展示場用に特注で作製したものだったかもしれない。 回転軸が中央ではなく一方に寄って、大きく開く側と小さい開口になる側ができる回転扉は、小金井市に移築された 江戸東京たてもの園 にある 前川國男自邸(http://tatemonoen.jp/area/west.html )で、玄関ホールからリビングルームへ入る箇所に設置されている。 もしかすると、小堀住研の設計担当者は、前川國男自邸の玄関ホールからリビングルームへの回転扉を見て、それを玄関扉に取り入れたのかもしれない。

  この現代和風の展示場を見て魅力を感じられた東京都葛飾区で建築される見込客の方を営業課長のUさんが追客して契約となった時の話である。
  小堀住研は、その後、会社名をエスバイエルに変えた頃から、変な方向に進み、社長の中島昭午が「超低価格帯のカテゴリーキラーを目指す」とかアホなことを言って、小堀のデザインにあこがれて「建てる時には絶対に小堀で」と思って小堀住研の全国の展示場を片っ端から見て回っている方があったりする高価格帯の見込客、かつて関西地方中心に「小堀で家を建てた」というのがハイクラスの会社員としてのひとつのステータスであって、その「小堀の家」を建てて住みたいと思って無理をしてでも建てた入居者を裏切る行為をおこない、そして、高級住宅の層を失うとともに、1970年代なかばから販売して支持を広げていた「高品質低価格」というクラスの見込客を対象とした「ハウス55」の客層をも切り捨て、そして、自社が持っていた「高級住宅」の層・「高品質低価格」の層をどぶに捨てるのと引き換えに、「超低価格帯」の層を獲得できたのかというとそれも獲得できず、じり貧になって、もともと、銀行出身の取締役・監査役の多い会社であったが、ついに、富士銀行出身の男が社長になり、とうとう、富士銀行は破産管財人を送り込んだか? と思っていると、大阪駅の目の前という一等地にあった本社ビルを売り払い、東京でも新宿西口の新宿センタービルや池袋のサンシャインなど一等地ビルにあった支店を家賃は安いだろうが便利の悪い場所に移し、富士銀行は取るだけとって手を引いたか? という感じで富士銀行出身の社長は去り、さらにその後、積水ハウス出身の男が社長になったので、もともとが軽量鉄骨造の住宅メーカーであった積水ハウスは、かつて、トーヨド建設というぱっとしない在来木造の会社を買収して 積水ハウス木造 にして木造住宅を始め、積水ハウス木造 が軌道に乗ると、それを積水ハウスの本体と合併して、積水ハウスで軽量鉄骨造と在来木造の両方をやるようになったのと同様に、エスバイエル(←小堀住研)も買収して積水ハウスの一部分にするつもりで、積水ハウス出身の男が社長になったのか? と思ったが、そのうち、ヤマダ電機が買収することになったようで、ヤマダ・エスバイエル・ホームという会社名に変わった。 ヤマダ電機が買収して後継会社は今も存在しているといっても、かつて、関西圏を中心に、ハイクラスの会社員にとって、「小堀の家」に住むというのが、ひとつのステータスであり、あこがれであったかつての小堀住研の建物もその建物を建てる能力のある会社も、すでに完全に消え去った。 自分の会社がどういういいところを持っているか、どういう客層が支持してくれているか、といったことを考える頭もない経営者が取った自殺とも言える行為による結果であったと思える。
   1989年の時点においては、「技術の小堀、設計の小堀、デザインの小堀」というフレーズを言って、そして、そう言われれば、そうかな・・・と思える建物を建てていた。 但し、関西圏に比べて東京圏では知名度は低く、松戸展示場でも、「建売屋か何かかと思って入ったが、本当にすばらしい建物でびっくりした。 建売屋かなどと思って、申し訳ない。」と感想を述べる来場客もあった。
  Uさんが追客して契約に結び付いたのは、東京都葛飾区で建替えを検討中であった、そういうその当時の小堀住研の、「小堀ならでは」の和風の建物に魅力を感じられたが、他の会社にも話をして最終的にどこにしようか決めようという方で、小堀住研以外には、同じ総合住宅展示場・ハウジングプラザ松戸の中に和風の住宅を出展していた 中央住宅(ポラスグループ)http://www.polus.co.jp/ と、後1社か2社、住友林業・菊池建設・杉坂建築事務所のどこかを検討対象にされていたと思う。(1980年代後半、東京都から千葉県にかけて、和風である程度以上費用をかけて高水準の戸建住宅を建てたいという場合、検討されるのは、在来木造の住友林業、菊池建設、杉坂建築事務所、佐藤秀工務店、それに木質パネル構法の小堀住研と、東京都なら在来木造の小堀住研だった。「東京都なら」というのは、小堀住研は在来木造で始まった会社だったが、この時点では木質パネル構法に比重が移り、東京支店のエリアでは在来木造で毎年何棟か建てていたが、千葉支店のエリアでは在来をやる職人がいなかった。中央住宅は建売・分譲が中心で高級住宅の会社ではなかったが、松戸に和風外観の展示場があったので、和風で考えているの方は検討されることがあった。)
  それで。 1990年代、一条工務店の経営者は新卒と中採の新入社員に「構造アプローチをやっているのは一条工務店だけで、他の会社はどこも、間取りをどうしましょうかとか値引きとかそんなことばかり話している」と教えていたが、それは嘘だ。 同業他社から転職で来た人間はその嘘を見抜き、誰もが「それはおかしい」と口にしたので、一条工務店の経営者や古くからいる「レジェンド」は同業他社から中採で来た人間が気に入らないらしかったが、悪いのは嘘を見抜く人間ではなく嘘をつく人間の方だ。 建売屋などは別として、請負で建てている会社はたいていの会社が、間取り・使い勝手とデザインと経済性、それとともに構造について見込客に話をしている。 私は一条工務店に在籍していた時にも、同業他社の住宅展示場に見学に行ったりもしたが、その際にも他社の営業は「構造アプローチ」をしている。 なぜ、一条工務店の経営者や自称「一条工務店の土台を築いてきた人たち」は嘘を教えたがるのか、理解に苦しんだ。
  小堀住研も「構造アプローチ」をしていた。 まず、構造について自社の建物を気に入ってもらった上で、高給住宅志向の「新桂」の場合は「小堀ならではのデザイン」、「高品質低価格」タイプの「ハウス55」の場合は経済性と「比較的低価格であるわりに、デザイン性にすぐれた垢ぬけたところがある」といった点に気に入ってもらい、図面が希望通りのものができて、見積もりも予算に沿ったものとなれば契約になる可能性が高い。 自社の建物の構造について説明もせず、構造について気に入ってもらえていないのに図面だけ書いたのでは契約につながる可能性は高くない。だから、当然のことながら「構造アプローチ」はしているのだ。 特に、小堀住研はもともとが在来木造の会社で、1970年前後においては「ミサワなんかと違って、きちいっとした木造の家を建てている会社です」と言って売り込み、ミサワあたりより上のクラスの層を対象としてミサワあたりよりも「高品質高価格」の建物を建てていた会社が、木質パネル構法という木質系の「プレハブ住宅」(工業化住宅)で建て始めたのであるから、「『プレハブ』という安物住宅の構造ではなく、在来木造とツーバイフォー工法の両方を参考にして考え出された最高の構造なのです」と思ってもらうために、そして、それをアプローチせずに、「安物のプレハブだろう」と決めつけられたのでは、高級住宅志向タイプだけでなく、「高品質低価格タイプ」のものもあくまで「高品質低価格」という趣旨の商品であって「ともかく安い」というタイプの商品ではないので、「プレハブなのに高い」ということになってしまうことになるという事情があり、構造アプローチはその理由で重視されていた。
  和風の外観で建てたいという人の場合、木構造で建てたい人が多い。 ツーバイフォー工法(枠組壁構法)でも和風の外観は不可能ではないが、北米から渡来した構法であるツーバイフォー工法のメーカーで建てようと検討される方というのは外観も洋風で考える方が多く、和風外観が好みの方がツーバイフォー工法を検討されることは少ない。 ありうるのは、在来木造と小堀の木質パネル構法だった。 そういう場合、在来木造のメーカーは「木造」を売りにするが、小堀住研には「小堀ならではのデザイン」「小堀ならではの設計力」という強みがあり、これがはまった相手には絶対的に強い。営業はそこをアプローチして絶対的に有利になろうとする。 問題は、和風の外観で建てたい人は「木造で」という意識の人が多く、「木質パネル構法より、木造の方がいい」と感覚的に思われると小堀は弱い。 だから、そこで負けないように「構造アプローチ」は特に念入りにおこなわれることになる。ひとつには「壁体内換気システム」という内部結露の解消策であり、「木質パネル構法」は工場で木質パネルを生産するので、現場で組み立てる在来木造よりも間違いがない、在来木造と違って自社でアメリカ合衆国から材木を輸入して自社の工場で加工して現場に運んでいるから、木造のようなバラツキはない、どの家にも同じ品質の構造材が使われる、木造のように、その家によって使う柱の質が変わったりするということはない、といった木質パネル構法であるから構造がいいというアプローチがなされる・・・が、ある程度以上、お金を出すことのできる層の場合、在来木造であればその家によって異なる材種・異なる品質の木材が構造材に使われる可能性があるという問題点を、逆に「木造の方がいい柱を使うことができる」と解釈して、在来木造の会社に頼めば、他人の家には輸入材のやす〜い木が使われても自分の家にはブランドむぉ〜んの「○○桧」で建てることができる・・と考える人も出てくる。
  そういう状況で。 松戸営業課長だったUさんは、小堀の木質パネルはツーバイフォー材と構造用合板を工場で接着剤で貼りあわせたものであったが、そのツーバイフォー材は、「ヘムファー1級」というヘムファー(べいつが)の中でもアメリカ合衆国で最大の材木会社ウェアハウザー社から最高のものを輸入していて、それを滋賀県と茨城県つくばの自社工場で「含水率19%以下」まで人工乾燥によって乾燥させて、その上で構造用合板と工場で接着剤で貼りあわせて一体化させている・・・といったことを話したのです。 それに対して、中央住宅(ポラスグループ)の営業が何と言ったか?
  何と言ったと思いますか?  吹き出しますよ。 木質系住宅建築業の会社にある程度以上勤めてきた者が聞くと。 「乾燥なんてやったって、雨にぬれれば一緒ですよ。 いったん、乾燥させても、湿気があがれば木はまた湿気をすって含水率はあがるんだから、意味ないですよ」と。 そう言ったそうです。 中央住宅(ポラスグループ)のアホ営業は。 それで、その見込客に対して中央住宅(プラスグループ)は信用を無くし、墓穴を掘った。

  この中央住宅のアホ営業の言ったこと、どう思いますか? よく言うわ、とあきれます・・・・が、それは木質系住宅建築業の会社に勤めてきた者か、木構造について学習してきた人間かにとってで、そうでない一般の人が、「乾燥なんてやったって、雨にぬれれば一緒ですよ。 いったん、乾燥させても、湿度があがれば木はまた湿気をすって含水率はあがるんだから、意味ないですよ」と思ったとしても、それはありうることでしょう。

  在来木造の一条工務店でも、杉の管柱の並柱は「人工乾燥で含水率20%以下まで下げています」とアプローチしていました。 (1階・2階を通しの柱が「通し柱」で、1階ごと・2階ごとの柱が「管柱(くだばしら)」、真壁(しんかべ)という柱が表に見える壁の作りの場所で見せる柱が「役柱」で、大壁(おおかべ)という柱が壁の中に入って見えなくなる部分の柱が「並柱」です。) 小堀で「19%以下」と言っていたものを、一条では「20%以下」と表現している、その1%の差ていったい何なのだろう? と思ったのですが、その理由はよくわかりません・・が、いずれにせよ、人工乾燥をするとその程度の含水率まで下げることができるわけです。
  人工乾燥にもいくつかの方法があり、一条工務店では、私が入社した1992年頃には「低温除湿乾燥」と言っていたのが、2000年前後には「中温除湿乾燥」と表現を変えました。 「低温」というのは冷蔵庫のように寒い場所で乾燥させるという意味ではなく、「摂氏45度くらい」でしたか、「人工乾燥庫としては比較的低い温度」の乾燥庫に入れて湿気を出させるという方法でした。 要するに、サウナ風呂みたいなものです。 「中温」と表現を変えたのは、「低温除湿乾燥」は乾燥させた時にでるひび割れが比較的少なくてすむという長所があるらしいのですが、一方で乾燥させるのに時間がかかるらしく、楽器や家具などではひびわれがでないという点が大事でも、住宅の構造材で並柱の場合は、そこまでの必要はないということで、少々、温度を上げたらしい、という点と、「工場見学会」を開催して見込客を案内した時に、「低温除湿乾燥」という名称だと寒いのではないのか、低温で乾燥できるのかと誤解を招くことがあるからのようでした。 小堀住研の工場でやっていた人工乾燥は、一条の「低温除湿乾燥」「中温除湿乾燥」とカタログに写っている写真とは違ったので、人工乾燥でも他の方法によるものだったのではないかと思います。
(参考) ≪「・・・野ざらしにして乾かすやり方だったら1年おいても、せいぜい15%近くまでしか乾かないさ、家具材などは広葉樹で狂いやすいせいもあるが、暖房のよく効いた屋内で使うものだから10%、高級なものでは7%ぐらいまでも乾かさなくてはならない。そうなるとお天気に頼るだけじゃなく、特別な装置を使わないと木は乾いてはくれない。こうした装置を使って乾かす方法を人工乾燥と言っている。」
「・・・・台車に板を桟積して、温度や湿度の調節できる煙突つきの部屋に送り込んで乾かすやつだね。部屋がいくつも並んでいたっけ。」・・・・
「・・・それが蒸気を使った人工乾燥室だ。 I F型と言ってね。 室内に送風機をとりつけてムラなく上手に空気をまわす。 他の方式よりも優れているとされていて、たいていの乾燥装置はこの型だ。」
「ほかにもいろいろな乾燥装置がある。 横長のタンクの中に水を入れて排気する減圧乾燥 だとか、電波で乾かす電子レンジのような高周波乾燥、 はては木を薬品で煮て乾かそうという薬品乾燥、 原始的な方では、木を煙でいぶして燻製をつくるような燻煙乾燥 などなど、だが、このような装置を使うのは木工品や特殊材などの場合が多く、建築用材や家具用材にはやはりさっきのI F型を使っているのがふつうだ。」 ≫
(上村武『棟梁も学ぶ木材の話』(1994.2.28.丸善)
  一条のカタログに掲載されていた防腐防蟻剤を木材に加圧注入するタンクと小堀のカタログに掲載されていた木材を人工乾燥する施設の写真似ていたのを覚えています。 この上村武『棟梁も学ぶ木材の話』の表現と小堀住研のカタログに掲載されていた写真から考えると、小堀住研の乾燥は≪横長のタンクの中に水を入れて排気する減圧乾燥≫か?という感じがします。
〔  防腐防蟻剤の加圧注入タンク横長のタンクでの人工乾燥施設に、もうひとつ、亀戸の城東マイホームセンターにあった「チェンバース」という会社の核汚染時の避難用シェルターなるものが外見が似ていたのを覚えています(外見がです。用途はそれぞれ違います)。城東マイホームセンターはもうありませんが、インターネットで検索すると、「チェンバース」の核シェルターは、
《シェルター設計製作のチェンバース設計》http://eco-heiban.com/shelter/shelter.html
《アトリエコア建築設計事務所 》http://atelier-core.net/%E4%BD%8F%E5%AE%85%E7%94%A8%E9%98%B2%E7%81%BD%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC/ に出ていました・・が、効果のほどはわかりません。又、一般家庭で、普段の住宅と別の核シェルターを持つということは簡単ではないでしょう。 〕

 自然乾燥ではだめなのかというと、自然乾燥をさせて悪いのではないのですが、「含水率19%以下」とか「含水率20%以下」とかいうそのレベルまで自然乾燥で乾燥させるのには相当に期間がかかるらしく、一般の住宅では自然乾燥で「含水率19%以下」・「20%以下」まで下げるということはなかなかできないらしいのです。
   人工乾燥には何種類かの方法があるらしく、小堀住研がおこなっていた人工乾燥の方法と一条工務店が採用していた人工乾燥の方法は別の方法のようですが、いずれの方法にせよ、人工乾燥によって含水率を下げるというのは木構造の建物においては大事なことで、「乾燥させても湿気があがれば、また、湿気を吸って一緒ですよ」などというものではないのです。

   どういうことか、といいますと、上村武『棟梁も学ぶ家づくり』(1994.2.28.丸善)に、その説明が出ています。↓
画像

≪ 「・・生材(なまざい)が乾いてゆくと木の中の水がどうなってゆくかを示したものだ。・・・・」
「まず、a(生材状態)を見てもらおうか。 細胞膜の部分は、完全に湿りっぱなしだ。 なお余った水は細胞の袋の中にたまり込んでいる。ぬれたスポンジのバケツに水をためた状態、とでも言っておこうか」
「木が乾いていって、膜自体の水分が抜け始めると、このバケツの中の水がそれを補ってゆくので、結果的には膜そのものの水分状態は全く変わらず、バケツの水分だけが次第に減ってゆき、図のa(生材状態)の生材はb(繊維飽和点)の状態に近づいてゆく。 a(生材状態)からb(繊維飽和点)の間は、木の目方が減るだけで、木の性質は何も変わりはしないのだ。バケツの中の水は、たまっているだけでバケツの性質にはかかわりないので、自由水と呼ばれている。 これがおれの言う働かない水だ。」
・・・
「さて、b(繊維飽和点)の状態の木材がさらに乾いてゆくとする。こんどは細胞膜に含まれている水が抜けていって、木材はc(気乾状態)の状態に近づくが、この水はさっきの自由水と違って、細胞を形づくっている木の分子としっかり手を握りあっているので、この水が抜けてゆくと木の性質は変わってゆく のだ。」
・・・・
「木が縮んでくるとか、強くなってくるとかいったことが。 ・・洗たく物だって、水をしぼるのは自由水を吐き出させることだが、そのあとで乾かしてゆくと手ざわりが堅くなったり縮んだりするだろう。あれと同じだよ。・・・・この細胞膜に含まれている方の水を働き水といったんだ。 この水は、正式の名前を結合水と呼ばれている。 木と結びあっているという意味だ。」
「cの状態は洗たく物でいえば、程よく乾いて人間が着用するときの状態だ。 木でいえばわれわれが毎日身のまわりでお目にかかる木材は、まあ大体この状態と思ってよかろう。 これを、空気と湿度と釣合いがとれて乾いた、という意味で気乾状態、その含水率を気乾含水率といっている。」
「気乾状態の木材に、熱をかけたりして、もっともっと水分を追い出してゆくと、ついに木材の中には水が全くなくなってしまう。これが図のdで、これを全乾状態と呼んでいる。 この状態はふつうではお目にかかれない特別な木の姿で、もし全乾状態をつくっても、空気中に放置しておけばやはり気乾状態にもどってしまう。 一方、ぬれた木材も長い間放置しておけばやはり気乾状態になってゆく。 ・・・」
・・・
「・・・むかしは建築に使う木材でも、枯らすと言ってな、自然に水分がぬけて気乾状態に近くなる、つまり狂わなくなってから使ったモンだ。 ビショビショの生材などで建てるとトラブルが起きやすい。 いま、建築に使う木材の含水率はなるべく柱が20%以下(スギとベイツガは乾きにくいから25%以下)敷居、かも居、なげしなどは18%以下、床板や壁材などは10〜15%にすることになっている。 はりけたは乾きにくいのでせめて30%以下にしたいと言われているぐらいだ。 ・・・・」
・・・・
「・・・図のbの状態は、自由水がだんだんに減って、ついにゼロになり、結合水はまだタップリある状態だ。この状態は繊維飽和点と呼ばれている。 繊維とは木材の細胞のこと、飽和とは、腹一杯のことで、結合水がこれ以上入りきれない状態を意味している。 これは英語の直訳でね、ファイバーサチュレーションポイント、略してF.S.Pという。 ・・・・この状態を境にして、これから下では木材の性質が水分の変化と共に変わってゆくし、これから上では変わらない、という境目だからだ。 この繊維飽和点の水分は、樹種によって差があるが、だいたい30%程度とされている。 」
・・・・≫
※ saturation (名詞)浸潤、飽和、没頭
   saturate   (他動詞)1.浸す、ずぶぬれにする、飽和させる。 ・・・
   fiber,fibre (名詞)繊維、繊維質[組織]。 ・・
   point (名詞)(名詞)・・・3. 点[部分]、地点、個所、場所、地位、・・・
 (岩崎民平・小稲義男『新英和中辞典 第三版』(1971.3版。 研究社)
  
   小堀住研の木質パネルの枠材(ツーバイフォー材)に使用していた「ヘムファー1級」が「含水率19%以下」まで人工乾燥で含水率を下げていた、一条工務店の管柱の並柱の杉材が「含水率20%以下」まで人工乾燥で含水率を下げていた・・とすると、その数値は、「繊維飽和点」「ファイバーサチュレーションポイント」「F.S.P」の含水率が「樹種によって差があるが、だいたい30%程度」であるという前提から考えると、「繊維飽和点」「ファイバーサチュレーションポイント」「F.S.P」より乾燥し水分が減った状態、細胞膜と結びついた「結合水」まである程度以上抜けた状態になっているということで、「繊維飽和点」より「気乾状態」に近づいた状態であり、生材とは木の性質が変わっているのであり、その後、湿度が上がっても雨に濡れても、それで生材の状態に戻るかというと戻らないのです。    細かい数字はともかく、この理屈は、木構造の住宅建築請負業の会社にある程度以上勤めてきた人間にとっては常識であり、それを、「乾燥なんてやったって、雨にぬれれば一緒ですよ。 いったん、乾燥させても、湿気があがれば木はまた湿気をすって含水率はあがるんだから、意味ないですよ」などとぬけぬけと発言したという中央住宅のアホ営業にはあきれます。 そのアホな発言のおかげで、中央住宅は墓穴を掘り、小堀住研の松戸展示場の課長だったUさんが「違いますよ。 それは・・・」ときっちりと説明したことで、逆にUさんは信用を得て、契約につながったのです。 Uさんは「まったく、中央住宅の営業はレベル低いなあ〜あ。 よく言うよな。」と言い、そして、新卒入社直後だった私に「おめえは、そんなこと言っちゃだめだぞ」と教えてくれたのでした。

  構造についてでまかせでいいかげんなことを言うというのは良心的ではないとともに、営業戦略としてもプラスにならず、自ら墓穴を掘る、サッカーで言うところの「オウンゴール」のような行動になる可能性があるのです。小堀住研に新卒入社した直後、私はある程度以上、住宅建築業の会社で営業の仕事をしてきた人なら、これは誰しもが認識している「営業の基礎」であるのだろうと思ったのですが、その後、勤めた在来木造の一条工務店では、でまかせを得意がって言う人をずいぶんと見ました。 そういう人を見ると、Uさんが中央住宅の営業について「まったく、レベル低いなあ」と思ったのと同様に「レベルの低い男だなあ」と思ったものですが、それを言うと一条工務店の営業本部長のA野さんが怒るので(なぜ、でまかせでいいかげんなことを言う人間を怒らないで、でまかせでいいかげんなことを言うと「墓穴を掘る」「オウンゴールになる」と指摘する人間の方に怒るのでしょうね・・・)、言わなくなりましたが、「王様の耳はロバの耳」と言うと怒られるから逆らうとうるさいから言わないようにしよう・・・と思って言わないようにしたとしても、だから、でまかせでいいかげんなことを言うのが営業上、プラスになるわけないと思います。

   なお、ツーバイフォー工法は、在来木造や木質パネル構法と違って、1階の床を作って1階の壁を作り、2階の床を作って2階の壁を作るという順番で作業を進める為、「作業性がよい」(1階の床を使ってその上で1階の壁を作ることができる。2階の床を使ってその上で2階の壁を作ることができる為、作業がしやすい)という長所はあるのですが、同時に1階の床、2階の床を作ったが屋根はまだできていないという段階で雨が降ると、びしょぬれになってしまうという問題もあるわけです。 「少々雨に濡れた」くらいならば、上の含水率の理屈から考えて問題はないはずなのですが、びしょ濡れ状態になっても問題がないか?というと、やっぱり好ましいわけではないのではないかとも思えます。 すべてに最高とはなかなかいかないようで、そのあたりはツーバイフォー工法の弱点ということになるでしょうか。

   次回、[第305回] http://shinkahousinght.at.webry.info/201412/article_4.html
 で、一条工務店の「研修」で教えられたのか(?)、でまかせでいいかげんなことを同業他社について言いたがるOくんの例を述べます。
    (2012.12.28.) 

☆ 教える気がなくなる新人
(1)-1 今回。
(1)-2 木質パネル構法と在来木造の木の使用量、筋交いは削っていいか? http://shinkahousinght.at.webry.info/201412/article_4.html
(1)-3 他社について嘘を教える研修、学ばない者が「知らない」のは本人が悪い http://shinkahousinght.at.webry.info/201412/article_5.html
(1)-4 「プレハブ」とは何か。建築現場の仮設小屋と「プレハブ」は一緒か? http://shinkahousinght.at.webry.info/201412/article_6.html
(1)-5 コンパネや集成材はぬるま湯につけると接着剤がはがれるか? http://shinkahousinght.at.webry.info/201412/article_7.html
(2) 現実の見込客を見ずに、「研修」で教えられたものを信奉する営業の愚かさ  http://shinkahousinght.at.webry.info/201503/article_1.html 


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